楠葉尚学会便り
ロッジ事業の終結について【報告】 令和5年4月27日 理事長 竹内 脩
令和3年11月1日より運営を休止してきた当法人所有の「楠葉ロッジ」について、楠葉会役員が経営されている株式会社との間で昨年11月25日売買契約が成立し、450万円で土地建物その他什器を譲渡いたしました。
それに伴い、金剛生駒紀泉国定公園事業として大阪府より執行認可を受けた青少年交流施設事業の廃止届を提出するとともに一般財団法人として支出が義務づけられている公益目的支出計画からの当事業の廃止届を2月24日に提出いたしまし。これにより経営開始から32年余に亘るロッジの歴史に終止符を打ちました。
今後残された当法人が公益目的支出計画として実施すべき事業は大阪府立学校(畷高を想定)への特定寄附だけとなります。
【楠葉ロッジ建設の経緯】
当ロッジは、昭和58(1983)年実施の四條畷高等学校創立80周年記念事業として「畷高後背の自然のなかで旺盛な体力の育成と、山中静思の和室を利用しての友好の場を提供する」という趣旨をもって同窓会員に広く呼びかけられた寄附による資金とともに大規模地権者から廉価での土地の提供を受けて建設されました。そして施設所有の必要から奨学金事業とセットで昭和60(1985)年財団が設立されました。
寄附の呼び掛けに協力された多くの会員のみなさま、実現に向けて各方面との折衝に尽力された諸先輩の熱意と努力の賜物と存じます
【運営の課題】
平成2(1990)年11月18日同窓企業の御尽力を得て、建物が竣工、運営が開始されましたが、程なく訪れた平成バブルの崩壊とその後の長期にわたる景気の低迷・低金利のなかで運営資金確保の目算が狂い、またロッジ管理ボランティアが病没するという不幸に直面します。
このような中、財団は運転資金の確保のため、独自に同窓会員への募金活動を行うようになり、同窓会員の間に同窓会からは会費の、財団からは募金の呼び掛けが行われ混乱が生じます。
管理(ロッジ及び財団事務)要員については会員の中から有償ボランティアをお願いすることになりましたが、その他清掃や樹木の剪定などには会員グループの熱心な勤労奉仕が続きました。
一方運営資金については、財団に募金の呼掛けを中止させる代わり同窓会で会費収入から毎年200万円の資金援助を行うことになりまた。
この方針に対し、同窓会がロッジを持つことに懸念を抱いていた会員からは会費納入拒否の動きも見られました。
【その後の展開】
その後政府による公益法人改革が進められる中で、平成25(2013)年当法人は、一般財団法人として許可を受け、公益目的支出計画としての青少年交流事業(楠葉ロッジの経営)の実施と一般事業としての奨学金事業を実施してきましたが、ロッジ事業については、主たる利用者の在校生については、学校行事としての宿泊事業は修学旅行や特定の夏季合宿以外でjは実施が難しくなるとともに任意の集団による宿泊活動も生徒指導上推奨されなくなって来ている中で、利用泊数の大きな伸びは見込めない状況にあります。
又OB、OGの利用についても麓から2時間近い徒歩の上、標高200メートルでは、夏暑く冬寒く、さらに風呂なし、食事は自炊か仕出し。結果利用がほとんど見込めない状況が続き、事業存続の意義を改めて問わざるをえなくなりました。
他方同窓会においては、会員の高齢化、現役世代の減少に伴い、財務面のゆとりがなくなる中で、会費の使い道の妥当性から尚学会への財政支援を中止せざるをえなくなりました。
その結果ロッジ事業の維持には、保有資金から毎年300万円以上の補填が必要になります。 くわえて施設の維持の観点からも、竣工から30年を経て、今後大規模修繕が必要になることは必至です。以上考えると同窓会を母体とする本事業の将来は全く見通せずそこに資金を使うことが妥当か?役員一同頭を抱え、母校創立120周年を期にロッジ事業から撤退し、手元に残る3000万円強の資金は府立学校(畷高を想定)への特定寄附に充てるという決断をした次第です(令和3年会報)。
【ロッジ事業撤退のプロセス】
撤退に当たっては、大阪府の執行認可を得た施設を適切に継承して頂く方を探すことが必要で、自然公園法により勝手な売買は認められません。もし適切な買い手が現れなければ、当財団の負担で上物を除却した上で植樹をするなどして自然に復元する責任があります。さらにそうしても土地の所有権は当方に残ってしまうためだれかの名義にしない限り法人は清算できないという最悪の事態に陥ります。逆に適当な方があれば、うまく処分できるかも知れないが、どうなるかはやってみなければわからないという状況の中で売却希望価格は、交渉の余地を残すため高目に設定することにした次第です。
そういう困難を抱えながら、令和3(2021)年8月28日、当法人の理事会評議員会において売却の方針を決定し、四條畷市内の不動産売買仲介業者に売買事務を委託しました(希望売値:仲介業者助言価格の倍の2000万円)。先ず同じ緑の文化園に施設を持つ2学校法人に意向打診するが、不調。工務店、不動産業者それぞれ1社から引き合いがありましたが、利用計画が見通せないことなどから、具体的な検討に至りませんでした。その後仲介業者の団体が運営する不動産流通情報システムに搭載し広く買い手を探した所、物件の稀少性から何件か引き合いはあったものの具体的な進展はありませんでした。
その後昨年4月の同窓会報で会員に対し、引き取りの呼び掛けを行った所、この度成約に至った楠葉会役員が経営されている株式会社からありがたくも買い入れ希望が仲介業者に出され、その後5ヶ月強に亘る大阪府の担当部署による事業承継の適格性についての事前協議をクリアし、11月1日売買交渉に向けての購入申込書が提出されました。当法人理事6名からなる調査諮問委員会議を招集し、5名の出席のもと成約金額での売却を決定し、最終交渉に望むとともに11月19日に当法人理事会評議員会に報告の上、最終合意に至り、11月25日契約調印しました。
【売却金額の妥当性】
令和4年の同窓会報に掲載した令和2年度末の当法人の正味財産額は約8800万円となっていますが、このうち土地は3900万円、竣工時の帳簿価格がそのまま記載されているものでバブル崩壊後の地価暴落を考えると実勢に比べ過大計上になっています。ちなみに令和3年度現在の固定資産税上の評価額は294万円に過ぎません。なお建物備品類の簿価は470万円ですが、不動産売買に当たっては築後30年を経過した物件は一般的には無価値となることを考えると450万円の売値は当方としては妥当な水準であると考えます。
以上楠葉ロッジの建設から撤退・処分に至る経過を概観しました。改めて当事業に関係された皆様の32年余に亘る御苦労に対し敬意を表しこれに感謝申し上げますとともに同窓会長として、ある意味「昭和の負の遺産」を整理できたことに安堵しています。
今後当法人は、同窓会と力をあわせ母校の教育環境の現代化に寄与して参ります。同窓生皆様の御支援御協力をよろしくお願い申し上げます。 (了)
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